各国のミュージシャンが語る<新型コロナ・ウィルス対策>の現状
メタル・ミュージシャンに世界のコロナ事情を聞くインタビュー。今回お届けするのは、母国スウェーデンに居を構えるマイケル・アモット(アーチ・エネミー)だ。パンデミックが本格化するその直前まで国外にいたというマイケル。独自の対策を講じていたスウェーデンの現状とは?
通訳:トミー・モーリー
※インタビューの本篇は、9月発売予定の『メタルハマー・ジャパンVol.3』にて!
予防はしっかり続けている
—現在は地元スウェーデンですか? 現地の状況はどうでしょうか?
俺はほとんどスウェーデンに住んでいたし、今ももちろんスウェーデンの自宅にいる。グレイトな状況だとは言えないけど、それはその人の視点によってさまざまな答え方になるだろう。COVID-19のパンデミックへのアプローチに関して、スウェーデンはほかの諸外国とはちょっと違うとは言え、まだ全然落ち着いたわけじゃないし、現在が適切なところにいるのかの答えもわからないかな。今でもリスクは高い状態にいるという認識を持っているよ。
—4月末には、同郷であるメシュガーのトーマス・ハーケ(d)氏にも話が聞けました。その際はロックダウンこそされていても、スーパーや薬局に行くなど日常生活は送れていて、国民も節度を持って行動がとれているとのことでした。ブラジル、アメリカ、イタリアのようなパニックに陥っていないという意味では成功の部類とも言えますが、その差はどこにあると思いますか?
世界的に見ればよくできたほうかもしれないが、こっちだって高齢者施設などを中心に感染が頻発し、かなりの数の高齢者が亡くなってもいる。だから、成功していると言えるのかは懐疑的だね。
—そのあたりは、多くの国と同じですかね。
こっちの人々は、どことなく事実から目を背けているところがあるんじゃないかと思っているよ。現状ではほぼ日常に戻っている気もするが、この2週間で“10万人あたり20人以上”の感染者が毎日発生しているのも事実だ。安心できる状態とは言えないだろうな。それでいて俺にできることと言えば、ニュースを毎日フォローして1日でも早く昔の状態に戻ることを祈るだけ。俺はこういったことの専門家でもないし、ほかの人と同じように考えているってことだね。そして感染しないように予防をしっかりとすること、それは守り続けているよ。
—バンド・メンバーとの交流は行なわれていますか?
基本的にメールでの文章のやり取りって感じかな。もちろん俺はみんなと連絡を取り合っているし、特にダニエル(アーランドソン/d)は近所に住んでいるんで、一緒に作業をすることが多いね。この1年間は、ふたりで新作に取りかかっている感じだね。
メキシコで曲を書いた
—その、気になる新作の進行具合とは?
基本的には作曲とデモの段階で、世の中がこんな状況になるもう少し前……正確には1月ぐらいから本腰を入れ始めている。俺らはふたりでメキシコに行ってさ。浜辺沿いに家を借りて、20日間でけっこうな数の曲を書いた。作曲するだけじゃなくて、スウェーデンの冬から逃げるバケーションというのが目的でもあったんで、暖かいメキシコの家に機材を集めて、簡易的なスタジオを作ったんだ。そのあとはタイにも滞在していたよ。その間にパンデミックが本格化してきて、帰国できなくなる前にスウェーデンに帰ってきたという感じ。
—そうだったんですね。
それにダニエルはひと足先にスウェーデンに帰っていたから、ヤツとふたりでまた作業が続けられるというのもあったんでね。もしあの時スウェーデンに戻っていなかったら、今もずっとタイで過ごさざるを得なくなっていたかもしれない。3月の末にはもうスウェーデンに帰ってきていて、それ以降は新作にかかりっきりだった。デモはもう完成していて、次のステップに進もうかというところまで来ている。レコーディングで使いたいスタジオがデンマークにあるんだけど、今の状況だと果たして出国できるのかもわからないので、ひょっとしたらスウェーデンで録音をするかもしれないね。
どの部屋にもフライングVが置いてある
—これほどの長期間バンドで演奏できないという状況は、ギターを始めてからこれまでなかったのでは?
アンジェラ(ゴソウ/vo)が抜け、アリッサ(ホワイト=グラズ/vo)が入ることになった2013年は、現在の状況に近かったと思う。多分あの年はアーチ・エネミーとして1年間ライヴをすることなく終わってしまったんじゃないかな。でも俺はスピリチュアル・ベガーズでツアーをしていたし、バンドとしての新作もリリースした。日本、メキシコ、ヨーロッパとツアーをしたと思う。そう思うと、現在が俺のミュージシャン生活のなかで、最もライヴをしていない期間になるだろう。
—やはり、そうなってしまいますよね……。
最近は時間があるのでYouTubeでアーチ・エネミーの過去のライヴ映像なんかを観ているけど、去年のフェスなんかの映像なんて、現在と世界が違い過ぎてまるでSF映画を見ているような気持ちにさえなってしまう。何千人ものオーディエンスがステージの前にひしめいていて、サーフしているオーディエンスもいる(笑)。ウィルス感染に対する心配はどこにもなくて、もう別世界だ。あんなことができるような世の中じゃなくなってしまったよ。
—ギタリストとしての質問をもうひとつ。あなたほどのキャリアになってくると“24時間とにかく練習”というイメージはさすがに持ちづらいですが、それでもギターのスキルをキープする必要は当然あると思います。そのために家でやっていることはありますか? 作曲することがギターの練習になっていたりするのでしょうか?
そうだね。何かしらの形で少しくらいは毎日ギターをプレイしているものさ。でも意識的に演奏するってことほとんどないんだよ。スウェーデンの自宅はどの部屋にもフライングVが置いてあって、フラっと入った部屋で手にしたギターをひたすら弾いていることもある(笑)。キッチンにも置いてあるし、家事の合間に弾くなんてのも当たり前のことでね。1時間没頭してプレイすることもあれば、5分しか演奏しないこともあて、“練習と決めて最低限何分弾く”なんていうことはしていないかな。それにデモ作りとなると俺がすべてのギターのトラッキングをしていて、けっこうクリエイティブなプロセスだよ。新しいギター・パートが浮かんできたりと、充実しているね。この1年は、今の段階でもすでにけっこうな時間ギターを弾いて過ごしていると思うな。
—今年中にアルバムをリリースというのは現実的ではないと思いますが、来年は強烈なアルバムとともに日本に来てグレイトなショウを見せてください!
それこそが、まさしくプランであり、俺らが望んでいることだ。インタビューありがとう。バイバイ!
※インタビューの本篇は、9月発売予定の『メタルハマー・ジャパンVol.3』にて!