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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

ミカエル・オーカーフェルト/オーペス【『METAL HAMMER JAPAN Vol.7』より】

傑作『ブラックウォーター・パーク』は最後の作品になるはずだった。

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 今でこそ、プログレッシブ・メタルの最高峰に位置する彼らであるが、『ブラックウォーター・パーク』を発売する前のバンドは、結成10年を経てなお世界的一歩を踏み出せずもがいていた。多様な要素を飲み込んだエクストリーム・メタル・バンドとしてスタートしつつも、そのカテゴリーにとどまることのなかったオーペスは、2001年リリースの『ブラックウォーター・パーク』をもって、世界中のメタル・ファンから注目を集める存在となる。20年前の本5thアルバムは、ミカエル・オーカーフェルトにとってどのような作品だったのだろうか。

Text by Rich Hobson
Interpretation by Mirai Kawashima

 

俺たちは無名でハングリーだったから。
>ミカエル・オーカーフェルト

 1990年にミカエル・オーカーフェルトがオーペスに加わったとき、彼の頭のなかは夢で一杯だった。彼はデス・メタルや“絶望的に知られていない”プログレのレコードが大好物だったが、その人格形成期にはヘヴィメタルがスタジアムをいっぱいにし、世界を征服していたから、非現実的な夢を見ていたのだ。

 だが10年経っても、オーペスはスタジアムでプレイすることはなかった。それどころか、パブすら一杯にしていなかった。“俺たちの初めてのヘッドライナー・ショウは、ハイ・ウィカムのホワイト・ホースというところだった。おじいさんが犬を連れてきていて、まるでバッド・ニュース(※イギリスのテレビ番組)みたいだったよ!”とミカエルは言う。

 2001年、オーペスは5枚目のアルバムの制作を進めていた。それまでのアルバムも“ジャンルを越えたエクストリーム・メタル”として評論家からは高い評価を受け、カルト的な評判となっていたが、“お金でいっぱいのプール”や“数台のロールスロイス”といった彼の子供の頃の夢に見合うものではなかった。

 “だけど多分、最初の契約書にサインをするときに疑うべきだったんだ。なんてったって、ボイラー室でサインをしたんだからさ!”と彼はクスクス笑う。“俺たちは無名でハングリーだったから”

 名声や栄光に邪魔されることなく、オーペスは最初の10年間、曲を書き、パーティに行き、ときどきライヴをやりながらホームタウンであるストックホルムで過ごす。だが、反対側の沿岸部であるヨーテボリでは、メロディック・デス・メタルが嵐を巻き起こそうとしていた。

 “ほとんど競争みたいになっていた”とミカエルは振り返る。“みんな新しい影響を見つけようとしていたんだ。イン・フレイムスがアコースティック・パートを取り入れたのを聴いたときのことを覚えていて、「あのクソ野郎ども!」なんて思ったね。彼らは俺たちのサウンドをパクろうとしてるって。実際のところ、おそらく彼らは俺たちのことなんて聴いたことすらなかっただろうけれどさ! どこかのバンドが斬新なことをするたびに、もっと先をいかなくちゃとストレスを感じていたから。「ほかのバンドが3分の曲をやるなら、俺たちは30分の曲をやらなくちゃ」って”

 

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バンドは少々気が抜けた感じでもあって。どうにもならなかったからさ。
>ミカエル・オーカーフェルト

 革新の波に取り憑かれ、初期オーペスのブラック/デス・メタルの要素は、フォーク、そしてプログレからドゥームといったあらゆるものと一緒に鍋のなかへ放り込まれ、多層で複数の意味を持つ究極のスープへと融合するまで煮込まれた。だが、実際に自分たちの音楽を大衆に届けられなければ、何の意味もない。“アグレッシブ”な交渉ののち、オーペスは新しいレーベル[ミュージック・フォー・ネイションズ]と契約した。

 “ヤツらにはダマされたよ!”とミカエルは大声をあげる。

 “[ピースヴィル]とは5 〜6 枚の契約で、まだ1枚目を出したところだった。だけど、ある日ハミー(ポール・ハルムショー/ピースヴィルの創立者、オーナー)が電話をかけてきて、彼は「ミュージック・フォー・ネイションズが、自分たちがオーペスと契約できないのなら、ピースヴィルへの支援を打ち切ると脅してきた」と言うんだ。俺はとても忠実な男だから……そのときはハミーを助けたかったんだね。それと同時に、俺のなかには「これでマノウォーやマーシフル・フェイト、メタリカと同じレーベルの所属だ」なんて考える浅はかな部分もあって。嬉しかったけど、俺たちの意見を聞かれずにことが進んだことへの怒りもあったな”

 ミュージック・フォー・ネイションズが、以前のレーベルよりもオーペスをプッシュしようとしていることが明らかとなり、駆け出しバンドとしての日々が終わりに近づいていることがわかると、そんな怒りも急速に消えていった。

 “いろいろな意味において、『ブラックウォーター・パーク』は、夢を見ていた俺たちにとって最後の作品になるはずだった。このアルバムのあと、あきらめて仕事を見つけ、自立しなくちゃいけないと感じていたから”とミカエルは言う。“何とかしなくちゃいけないことはわかっていた。音楽的にはいまだ触発されていて、こだわってもいたけど、バンドは少々気が抜けた感じでもあって。どうにもならなかったからさ”

 ストックホルムで活気を失っていたバンドだが、ある晩ミカエルとドラマーのマーティン・ロペスが、リンケビューにあるリハーサル・スタジオに向かう途中の地下鉄で強盗に遭遇、事態はさらに悪化した。“そいつはナイフを俺の脚に当て金を要求してきた。だけど、俺たちはお金なんて持っていなかったから!”とミカエルは振り返る。“さらに多くの人が乗ってきたから、ヤツは誰かが警察を呼ぶ前に退散していったね”

 

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